月刊「理系への数学」数学パズルにトドメをさす?! 今月のFlash
第10回
2011年 2月号
確率パズルにだまされるな!(その3)〜ベルトランの作為的な無作為〜
「10個の点」の問題においてコインで必ず覆える最大の個数を探る

目的

「平面上に任意に配置された10個の点は、いくつかの単位円板を重ならないようにうまく配置することで必ず全て覆うことができる」という命題には、本編で紹介したように、稲葉氏によって確率の考え方を用いたスマートな証明が与えられていますが、「10個の点」を「N個の点」に変えても命題が成立するようなNの最大値はいくつかという問いの答えは現時点ではまだ知られていないようです。

ここでは、最大60個の点をランダムないし手動で配置し、実際に円板で覆えるかどうかを試行錯誤しながら、Nの最大値がどのあたりにあるか探ってみましょう。

操作方法

コインの配置

既に配置された点を覆うようにコイン(円板)を配置していきます。

・「コイン操作モード」ボタンにより、コインを動かせるようになります。(初期状態、および、ランダム配置の直後は、コイン操作モードになっています。)

・新規にコインを配置する場合は、右側の「コイン操作モード」ボタンの下にあるコインを左側のワークエリア内にドラッグします。

・既に配置されているコインをドラッグして動かすことができます。ただし、ドラッグ先が他のコインと重なる場合は動かせません。

・ワークエリアのコインを取り除く時は、エリア外にドラッグします。(コインの一部分でも枠外に出た状態でマウスボタンを放すと、コインは消えます。)

・コインに覆われていない点は赤色、覆われた点は青色で表示されます。点は表示の都合上面積のある丸で表されますが、実際にはその中心の1点さえ円板に含まれれば、覆われたと判断されます。

・コインは最大25個まで配置できます。

点の手動配置

・「点移動モード」では、既に配置された点をドラッグして動かすことができます。ただし、動かせる範囲は枠内内側の白い正方形のエリア内だけです。また、コインの下にある点はドラッグできないので、その場合は一旦コインを移動させるか取り除いてから動かします。

・「点追加モード」では、最大60個になるまで点を追加できます。このモードでは、枠内の白い正方形のエリアをクリックすると、そこに新たな点が配置されます。

・「点削除モード」では、既に配置されている点をクリックして取り除くことができます。(ここでも、コインの下にある点は取り除くことができません。)

点のランダム配置

・点の初期配置個数を▲▼ボタンにより設定して「最初から」ボタンをクリックすると、あらためてその個数の点がランダムに配置されます。(それ以前の点やコインの配置は失われます。)

・初期配置数は、10個から60個までの範囲で設定できます。

円板で覆えない配置を探す

Nの最大値NMAXをいきなり求めるのは困難が予想されますが、とりあえず「どうやっても円板では覆えないような点の配置」を探すということであれば比較的取っかかりやすいのではないでしょうか。なるべく少ない点の数でそのような配置が実現できれば、NMAXは少なくともその値よりは小さいことになります。

そのような配置を探す方法としては、たとえば、まずはそれを覆うような円板の配置に強い制約が生じるような規則的な点の配置(例えば、単位円より少しだけ大きい円周上に短い間隔で点を配置するパターンなど)を考えた上で、それを覆うための円板の配置にとって都合の悪い場所にさらに点を追加することで、ある程度理詰めで被覆不可能な配置を求める、というようなアプローチが考えられます。

ひまつぶしパズルとして

点の配置数を40〜50個程度に設定してランダム配置を行うと、少し試行錯誤すればコインで覆えるような手頃な配置になることが多いようです。

もっと歯ごたえのある一人遊びとしては、まずは20個ぐらいから出発し、一旦コインで覆った後、コインで覆われていない箇所(特に3つ以上のコインに囲まれた地域)にいくつか点を追加した上であらためてコインで覆ってみる、という操作を繰り返すと、確実に難しく変化していく配置に挑戦することができます。

参考

稲葉のパズル研究室 http://inabapuzzle.com/

ルールから考案したオリジナルパズルを中心とした稲葉直貴氏のサイト。「本格パズルの部屋」のバリエーションの豊かさと質の高さは圧巻。「10個の点」は「ひらめきパズルの部屋」で紹介されている。