月刊「理系への数学」幾何大王からの挑戦状・特別付録 2012年3月公開
ラングレーの問題の初等幾何による証明12選+α

問題(ラングレーの問題)

凸四角形ABCDにおいて, ∠ABD=20°, ∠DBC=60°, ∠BCA=50°, ∠ACD=30°のとき, ∠BDAを求め,その角度となることを初等幾何で証明してください.

答え ∠BDA=30°

証明例1系列1-13としての証明)

線分DC上に ∠EBC=20°となるように点Eをとると, ∠BCE=∠CEB=80°より, BC=BE.
∠BCA=∠BAC=50°より, BC=BA.
よって, BA=BEとなり, ∠ABE=60°より △ABEは正三角形.
∠DBE=∠EDB=40°なので, DE=BE=AE.
したがって,3点A,B,DはEを中心とする同一円周上にあり,円周角の定理より, ∠BDA=∠BEA/2=30°.


証明例2系列1-13としての証明)

∠ABCの二等分線と線分CDとの交点をEとし, 線分BEのE側の延長上に点Xを,線分ABのA側の延長上に点Yをそれぞれとる.
∠CAB=50°=∠BCAなので, BC=BAであり, 2点A,Cは, ∠ABCの二等分線である直線BEを軸に互いに対称の位置にある.
∠CEB=60°なので,対称性より ∠BEA=60°であり, ∠AED=∠DEX=60°となるので,直線DEは ∠AEXの二等分線.
また, ∠ABE=∠ABC/2=40°=2∠ABDより,直線BDは ∠ABEの二等分線.
よって,点Dは △ABEの ∠ABEの内側にある傍心となり, 直線ADは ∠YAEの二等分線である.
∠YAE=∠ABE+∠BEA=100°, ∠YAD=∠YAE/2=50°,
∠BDA=∠YAD-∠ABD=30°.


証明例3系列1-13としての証明)

ACを1辺とする正三角形ACEをACから見てBと逆側に作る.
∠BCA=∠CAB=50°より, BC=BAなので,四角形ABCEはBEを対称軸とする凧型となり, ∠ABE=∠ABC/2=40°, ∠BEA=∠CEA/2=30°.
また, ∠ACD=30°より,直線CDは線分AEの垂直二等分線となる.
ここで, △ABEの外接円の劣弧AEと直線CDとの交点をD'とすると, 対称性より, 弧AD'=弧D'Eとなり, 円周角の定理より, ∠ABD'=∠D'BE=∠ABE/2=20°=∠ABD.
よって,D'はDと一致し,円周角の定理より ∠BDA=∠BEA=30°.


証明例4系列1-5としての証明)

CDを一辺とする正三角形DCEをCDから見てBと逆側に作り,DからAEに降ろした垂線と直線BCとの交点をFとする.また,線分FEのE側の延長上にEG=ECとなるような点Gをとり,△GCFの外接円と直線DGとの点G以外の交点をA'とする.
対称性より, ∠FEC=∠ECF=180°-50°-30°-60°=40°.
EG=ECより, ∠EGC=∠GCE=∠FEC/2=20°.
EG=EC=EDより, ∠EGD=∠GDE=∠FED/2=(60°+40°)/2=50°.
4点A'CFGが同一円周上にあるので, ∠BCA'=∠FGA'=50°, ∠GA'F=∠GCF=20°+40°=60°.
∠DA'F=60°=∠DBFより,4点A'BFDは同一円周上にあり, ∠A'BF=∠GDF=50°+30°=80°.
∠BCA'=50°=∠BCA, ∠A'BC=∠ABC=80°より, A'はAと一致する.
∠CGA=∠EGD-∠EGC=30°, ∠BFA=∠CFA=∠CGA=30°(4点ACFGは同一円周上).
∠BDA=∠BFA=30°(4点ABFDは同一円周上).


証明例5(The Mathematical Gazette誌で最初に紹介された証明の1つ)

直線ABと直線DCの交点をEとすると, ∠ABC=∠BCD=80°よりEB=EC, ∠CEB=20°=∠ABDより BD=ED.
∠CAB=50°=∠BCAより,BA=BC.
線分EB上にBF=BDとなるように点Fをとり,線分DFのF側の延長上にFG=BCとなるように点Gをとる.
∠DFB=∠BDF=80°より, ∠GDE=∠DFB-∠DEF=60°.
∠GFE=80°=∠BCD, EF=EB-BF=EB-BD=EC-ED=DCより, △EGF≡△DBC(二辺夾角相等)で, ∠EGD=∠DBC=60°.
よって,△EGDは正三角形.
FA=BF-BA=BD-BC=ED-FG=GD-FG=FD.
∴ ∠ADF=∠FAD=50°, ∠BDA=∠BDF-∠ADF=30°.


証明例6(The Mathematical Gazette誌で最初に紹介された証明の1つ)

線分BD上にBE=BCとなるように点Eをとり, △DBCの内心をFとする.
∠EBC=60°より, △EBCは正三角形.
∠DBF=∠FBC=30°, ∠BCF=∠FCD=40°, ∠CDF=∠FDB=20°.
∠DCE=20°=∠CDF, ∠EDC=40°=∠FCDより, △EDC≡△FCD.
∴ FD=EC=BC=BA (∵ ∠CAB=50°=∠BCA).
また, ∠FDB=20°=∠ABDより, FD//BA.
よって,四角形ABFDは平行四辺形で, ∠BDA=∠DBF=30°.


証明例7(The Mathematical Gazette誌で最初に紹介された証明の1つ)

Aを通る直線BCの平行線と線分CDの交点をEとし,Bを通る直線CDの平行線と直線AEの交点をF,Cを通る直線BAの平行線と直線AEの交点をG,直線BFと直線CAの交点をHとする.
∠CAB=50°=∠BCAより,平行四辺形ABCGは菱形.
∠ABC=∠BCE=80°より,台形ABCEはAB=ECの等脚台形.
平行四辺形ECBF≡平行四辺形ABCGとなるので,四角形FBCEも菱形.
∠GBC=∠ABG=40°, ∠FBC=180°-∠BCE=100°より, ∠FBG=60°=∠CBD.
ここで,菱形の対称性より,直線BEを軸として線分BFと線分BCは互いに対称なので,直線BGと直線BDも互いに対称であり,また,直線FEと直線CEも互いに対称なので,2点G,Dは直線BEを軸に対称の位置にある.
よって, BG=BD.
さらに,直線CAを軸とした対称性より, ∠HGB=∠HBG=60°で, △HBGは正三角形.
BH=BG=BD, ∠ABH=20°=∠ABDより, △HBA≡△DBAであり, ∠BDA=∠BHA=30°.


証明例8(「フランクリンの凧」という通称の元となった証明)

Dを通る直線BCの平行線と直線BAの交点をEとし,線分BDと線分CEの交点をFとする.
∠EBC=∠BCD=80°より,台形EBCDは EB=DCの等脚台形で, ∠BCE=∠DBC=60°となるので, △FBCと△FDEはともに正三角形.
また, ∠CAB=50°=∠BCAより, BA=BC=BFなので, ∠BFA=∠FAB=80°.
∠FEA=40°, ∠AFE=180°-∠CFB-∠BFA=40°=∠FEAより, AE=AF.
よって,四角形EAFDはADを対称軸とする凧型であり, ∠BDA=∠FDE/2=30°.


証明例9mathcircle.berkeley.eduより)

BC,CDを2辺とする平行四辺形EBCDを作り,線分BD上に BF=BCとなるような点Fをとる.
∠FBC=60°なので, △FBCは正三角形.
∠FCD=∠BCD-60°=20°.
∠EBA=∠EBC-∠ABC=100°-80°=20°.
∠CAB=50°=∠BCAより, BA=BC=CF.
EB=DC, ∠EBA=∠FCDなので, △EBA≡△DCF(二辺夾角相等).
よって, ∠AEB=∠CDF=40°.
∠DEB=∠BCD=80°より, ∠DEA=40°=∠AEBであり, ∠EBA=∠ABD(=20°)なので, 点Aは△EBDの内心.
∠BDE=∠DBC=60°より, ∠BDA=∠BDE/2=30°.


証明例10mathcircle.berkeley.eduより)

直線ABと直線DCの交点をEとすると,∠ABC=∠BCD=80°よりEB=EC, ∠CEB=20°=∠ABDより DB=DE.
直線ECを軸に点Bと対称の位置に点Fをとると,対称性より EF=EB, DF=DB=DE, ∠EDF=∠BDE=140°, ∠FEC=∠CEB=20°.
直線EBを軸に点Cと対称の位置に点Gをとると,対称性より EG=EC, ∠EGA=∠ACE=30°, ∠BEG=∠CEB=20°.
EG=EC=EB=EF, ∠FEG=20°+20°+20°=60°より, △EGFは正三角形.
∠EGA=30°より,直線GAは線分EFの垂直二等分線であり, DF=DEより,点Dは線分EFの垂直二等分線上にあるので, 3点GADは同一直線上にある.
直線GAについての対称性より, ∠GDE=∠FDG=(360°-∠EDF)/2=110°.
∠BDA=180°-∠CDB-∠GDE=180°-40°-110°=30°.


証明例11jwilson.coe.uga.eduより)

直線ABと直線DCの交点をEとすると, ∠CEB=20°=∠ABDより DB=DE.
また, ∠CAB=50°=∠BCAより, BA=BC.
∠ABCの二等分線と∠BDEの二等分線の交点をFとし,BFとDCの交点をGとする.
BA=BCより,2点A,Cは直線BFを軸に互いに対称の位置にある.
また,DE=DBより,2点E,Bは直線DFを軸に互いに対称の位置にある.
∠ABG=∠GBC=∠ABC/2=40°, ∠DBF=∠ABG-∠ABD=20°, ∠FED=∠DBF=20°.
∠BGA=∠CGB=60°, ∠AGE=180°-60°-60°=60°, ∠EGF=∠CGB=60°.
∠FEG=∠GEA, ∠EGF=∠AGEより, △EAG≡△EFG(二角夾辺相等)なので, 2点A,Fは直線EGを軸に互いに対称の位置にある.
∠BFD=90°-∠EBF=50°, ∠DAG=∠GFD=50°.
∠GDA=180°-∠DAG-∠AGE=70°,
∠BDA=∠GDA-∠CDB=70°-40°=30°.


証明例12「技術系サラリーマンの交差点」より)

直線ABと直線DCの交点をEとすると, ∠ABC=∠BCD=80°より EB=EC, ∠CEB=20°=∠ABDより DB=DE.
また,∠CAB=50°=∠BCAより, BA=BC.
EからBCに降ろした垂線の足をF,DからBCに降ろした垂線の足をGとする.
ここで, EB=EC=1として, BA=BC=a, DB=DE=bとおく.
EB=ECより, BF=FC=a/2.
∠DBC=60°より, BG=DB/2=b/2, FG=BG-BF=(b-a)/2.
また, FG:FC=ED:EC=b:1より, FG=b・FC=ab/2.
よって, (b-a)/2=ab/2となり, b=a/(1-a).
BA:BD=a:b=a:a/(1-a)=1-a:1=EA:ECであり, ∠ABD=∠AEC(=20°)なので, △ABD∽△AEC.
∴ ∠BDA=∠ECA=30°.

正弦定理を用いた証明

∠BDA = θとおく.
∠DAB = 160° - θ, ∠BCD = 80°, ∠CDB = 40°なので,
正弦定理より,
AB/sinθ = BD/sin(160°-θ) = BD/sin(20°+θ),
BC/sin40° = BD/sin80°.
∠CAB=50° = ∠BCAより, AB = BCなので,
sinθ/sin(20°+θ) = sin40°/sin80°.
sinθ・sin80° = sin(20°+θ)・sin40°
= (sin20°・cosθ + cos20°・sinθ)sin40°
= sin20°・sin40°・cosθ + cos20°・sin40°・sinθ.
tanθ = sinθ / cosθ
= sin20°・sin40° / (sin80° - cos20°・sin40°)
= sin20°・sin40° / (2sin40°・cos40° - cos20°・sin40°)
= sin20° / (2cos40° - cos20°).
ここで,
sin20° = sin(60°-40°)
= (√3/2)cos40° - (1/2)sin40°,
cos20° = cos(60°-40°)
= (1/2)cos40° + (√3/2)sin40°,
2cos40° - cos20°
= (3/2)cos40° - (√3/2)sin40°
= √3sin20°
なので,
tanθ = sin20°/(√3sin20°) = 1/√3.
∴ ∠BDA = θ = 30°.

チェバの定理の代数的な言い換えを用いた証明

△DBCの外接円と直線CAとのC以外の交点をEとおく.
円周角の定理より, ∠BDE=∠BCA=50°, ∠DEC=∠DBC=60°, ∠CEB=∠CDB=40°, ∠EBD=∠ACD=30°, ∠EBA=∠EBD-∠ABD=10°.
BE上に, ∠BDF=30°となる点Fをとると, ∠FDE=20°.
チェバの定理の逆の三角関数表現より,△EBDにおいて,
sin∠BDF・sin∠DEA・sin∠EBA = sin∠FDE・sin∠AEB・sin∠ABD
が成り立つならば,3直線DF,EA,BAは1点で交わる.
S = sin∠BDF・sin∠DEA・sin∠EBA-sin∠FDE・sin∠AEB・sin∠ABD
= sin30°・sin60°・sin10°-sin20°・sin40°・sin20°とおく.
ここで,sinθ = (e^(iθ)-e^(-iθ))/(2i)と表されるので,
ω = e^(2iπ/3) とおき,
e^(iπ) = -1, 1+ω+ω^2 = 0を用いると,
((2i)^3)S
= (e^(iπ/6)-e^(-iπ/6))(e^(iπ/3)-e^(-iπ/3))(e^(iπ/18)-e^(-iπ/18))
 -(e^(iπ/9)-e^(-iπ/9))^2(e^(2iπ/9)-e^(-2iπ/9))
= e^(5iπ/9)-e^(4iπ/9)-e^(-iπ/9)+e^(-2iπ/9)
 -e^(2iπ/9)+e^(iπ/9)+e^(-4iπ/9)-e^(-5iπ/9)
 -e^(4iπ/9)+1+2e^(2iπ/9)-2e^(-2iπ/9)-1+e^(-4iπ/9)
= e^(5iπ/9)-e^(4iπ/9)-e^(-iπ/9)-e^(-2iπ/9)
 +e^(2iπ/9)+e^(iπ/9)+e^(-4iπ/9)-e^(-5iπ/9)
 -e^(4iπ/9)+e^(-4iπ/9)
= e^(5iπ/9)+e^(13iπ/9)+e^(8iπ/9)+e^(7iπ/9)
 +e^(2iπ/9)+e^(iπ/9)+e^(14iπ/9)+e^(4iπ/9)
 -e^(4iπ/9)-e^(5iπ/9)
= e^(iπ/9)+e^(7iπ/9)+e^(13iπ/9)
 +e^(2iπ/9)+e^(8iπ/9)+e^(14iπ/9)
= e^(iπ/9)(1+ω+ω^2)+e^(2iπ/9)(1+ω+ω^2)
= 0.
よって,S=0より
sin∠BDF・sin∠DEA・sin∠EBA = sin∠FDE・sin∠AEB・sin∠ABD
が成り立ち,3直線DF,EA,BAは1点で交わる.
すなわち,点Aは直線DF上にあり,
∠BDA = ∠BDF = 30°.