月刊「理系への数学」数学パズルにトドメをさす?! 今月のFlash
第13回
2011年 5月号
同じ形に分割せよ!(その3)〜1.26次元の世界〜
自己相似の構造からフラクタル曲線を描く

目的

前回までの相似分割の境界線として出現したような自己相似曲線を,自己相似の構造を元に描画し,そのフラクタル次元(ハウスドルフ次元)を算出します。コッホ曲線やシェルピンスキーのギャスケット等,様々な著名なフラクタル図形も,自己相似の構造を定義するだけで必然的に出現することを確認し,また自由に色々な図形を作ってみましょう。

なお,今回も右クリックメニューによる画面ズーム機能が使えます。フラクタル曲線は完全なものは描画できないので,実際にはある程度の深さまで再帰的に描画したものを表示しています。拡大していくと描画の不完全な部分が見えてきますが,それを観察することで,全体として眺めた時の形状に近づくプロセスが理解できるかもしれません。

操作方法

・自己相似構造を設定して右下の「Draw」ボタンをクリックすると,対応する自己相似曲線が描画され,算出されたフラクタル次元が表示されます。

・設定を変更して別の図形を描画する際には,右下の「Edit」ボタンをクリックすると,再び構造を設定するモードに戻ります。

自己相似構造を規定する部品数の選択

自己相似構造は,いくつかの自己相似部品および線分をどのように並べれば全体図形全体と一致するかを表現することで定義しますが,その際の部品の個数を,画面右上のボタンで2〜4のうちから選びます。なお,部品の個数を選択した時点でのデフォルトの設定で描画すると,2個および4個の場合はコッホ曲線,3個の場合は前回までの相似分割で正三角形を相似比2:1:1に分割する際の境界線が描かれます。

連結点の座標の指定

画面左側の描画部では,曲線全体の始点終点(座標固定)は青丸で,その間に並べる部品の連結点は赤丸で表示します。この赤丸をドラッグすることで,自己相似構造図の形状を決めます。

各部品の端点は,左側の青丸を始点P1とし,そこから順にP1,P2,…として,その座標が右側の一覧に表示されます。(P1を(0,0),終点を(1,0)とします。)また,端点によって規定される各部品の大きさ(両端点間の距離)と,角度(両端点を結ぶベクトルのx軸に対する偏角)も,随時表示されます。

各部品の属性の指定

各部品が,全体を縮小した自己相似部品なのかそれともただの線分なのか,自己相似部品の場合はどういう向きで接続されるのかを,画面左側の各部品を表す線分に付いているアイコン,または,画面右側の各部品の情報に付いているアイコンをクリックすることで選択します。Fの文字が表示されているアイコンは自己相似部品を表し,そのFの向きが接続される向きを表します。また,Fの文字のない丸印は,その部品がただの線分であることを表します。

なお,ここで部品の向きとは,その自己相似部品を,曲線全体の始点から終点にいたる流れの中での入口が左側,出口が右側になるような向きで見たものと,全体を始点が左側,終点が右側になるような向きで見たものを比較したときに,上下左右の向きが一致しているか反転しているかという種別のことで,4通りのバリエーションがあります。したがって,アイコンをクリックすると,この4通りと,ただの線分の場合を合わせ,5通りの属性に順次切り替わります。

具体例

2個の部品で構成される曲線

まず,部品を2個に設定したときのデフォルトの状態(コッホ曲線)から,P1を上に移動させていくと,3点のなす角が直角に近づくにつれ,三角形がひび割れたような形状となり,最終的には直角二等辺三角形が埋め尽くされます。その状態で今度は左側の自己相似部品の向きを全体の向きと同じになるよう変更する(右側は,全体と上下左右とも逆のまま)と,ドラゴン曲線と呼ばれる図形が出現します。さらに,右側も全体と同じ向きにすると,レヴィのC曲線となります。

2つの部品のシンプルな構成でも,さらに左右の部品の大きさを非対称にすれば,さらに多様な図形が作れます。たとえば,上記ドラゴン曲線の設定で,P1の座標を,3点の角が鈍角となる範囲内でいろいろ動かしてみて下さい。

シェルピンスキーのギャスケット

部品を3個に設定したときのデフォルトの状態では,2番目の部品はただの直線となっていますが,これを全体と同じ向きの自己相似部品に変更すると,シェルピンスキーのギャスケットが出現します。この図形は,2次元の図形である正三角形から出発して,中点を結んでできる正三角形を切り抜いて3つの小さい正三角形にするという操作を再帰的に繰り返したものとして一般には理解されますが,このようにフラクタル曲線として構成することもできるのです。

第12回Flashの相似分割図形の周に出現する曲線

前回のFlashで,正三角形や正方形を3つの相似な図形に分割した際の,各分割図形の周に出現した自己相似曲線の多くは,今回のFlashでも再現できます。

特に,正三角形の3分割については,全て,3つの部品(2つの自己相似部品と それをつなぐ線分)を用いて描けます。例えば,前回のサムネイルでも使用した,ID=210, (a,b)=(77,44)については,左側の自己相似部品は上下のみ反転,右側の自己相似部品は上下左右とも反転にして,P1(0.63,-0.41),P2(0.76,-0.38)ぐらいにすると,似たような曲線が描けます。また,2つの自己相似部品をどちらも上下左右反転として,P1(0.43,-0.73),P2(0.90,-0.18)ぐらいにすると,ID=200, (a,b)=(90,19)のような三角のうずまきが出現します。

四角形の3分割については,2つの相似部品以外に線分2本だけでは作れないものも多いのですが,それでも一部の図形については再現できます。例えば,4つの部品を,始点から順に「線分」「上下のみ反転した自己相似部品」「線分」「上下左右とも反転した自己相似部品」とし,P1(0.08,-0.11), P2(0.85,-0.37), P3(0.97,-0.29)ぐらいにすると,ID=131, (a,b)=(83,28)に似た図形になり,また3つの部品を,始点から順に「線分」「上下のみ反転した自己相似部品」「上下のみ反転した自己相似部品」とし,P1(0.09,0.06), P2(0.88,-0.28)ぐらいにすると,ID=133, (a,b)=(90,27)に似た図形となります。